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図10 呼吸器感染症を合併した癌の種類

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図11 心胆夫を合併した癌の種類

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図12 心筋梗塞を合併した癌の種類

末期癌患者の苦しみの原因の一つであることは間違いない。
臨床的には左心不全には心臓の肥大、拡張の他に頻脈やチアノーゼを、右心肥大には右心の肥大や拡張、浮腫、肝腫大が認められ、末期癌患者にこれらの変化のあった場合、心不全を考えてその治療を行うことが患者の苦痛を取り除くことに有効と考える。
次に図12では剖検例で、心筋梗塞(急性および陳旧性)を合併した癌の種類と頻度を調査した。前立腺癌では、心筋梗塞を合併する例が多く24%に認められ、急性心筋梗塞では8%、陳旧性心筋梗塞では16%である。次いで肺癌5.5%、胃癌2%、大腸癌0%、乳癌0%であった。
前立腺癌の患者の場合は以前から心筋梗塞のある場合はその経過観察を行い、心筋梗塞や狭心症のない場合でも癌の経過中に狭心症や心筋梗塞を起こす可能性のあることを予想しながら平素から胸痛、呼吸困難、胃腸症状、不整脈などの注意を行い、もし疑わしい症状のある場合は心電図などの検査を行い、虚血性変化の確認ができた場合は末期癌患者でもその年齢や状態に応じて治療を行うことが患者のQOLを高める上で重要である。
考察
今回は提出しなかったが、日本剖検輯報より他の施設についても癌の合併症を集計した。その結果は、各病院間の使命に応じて、最後まで積極的な治療を行い、新薬に期待をかけて種々の可能性を考える病院、あるいは患者や家族の希望を重要視して積極的な治療を希望しない場合は延命よりも対症療法を重要視する病院により、死亡した癌患者の合併症に差のあることがわかった。さらに訪問看護により末期を家で過ごして亡くなった場合など、剖検の結果に著名な違いが出るのが当然であると考える。
さらに、剖検の結果だけについても各施設間による違いが当然出てくるものと考える。
ここで強調したいことは、病院間で剖検例の合併症の頻度に相違はあってもやはり重篤な合併症の存在することで、特に頻度の多い感染症については注意深い対処が必要であることを強調したい。

 

 

 

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